里山の豊かさを物語る国蝶、オオムラサキ

2017年8月1日(火)
オオムラサキのオス。メスの翅は茶色がかった紫色をしています。

オオムラサキのオス。メスの翅は茶色がかった紫色をしています。

夏の里山は昆虫の王国です。子どもたちに人気があるのはカブトムシやクワガタなどですが、今回は「里山の宝石」とも呼ばれるオオムラサキの話をしましょう。

オオムラサキは羽を広げると10センチ以上になる大型のタテハ蝶です。見られる時期は6月下旬~7月下旬頃に限られているものの、名前の通りにオスの翅(はね)が鮮やかな青紫色をしています。その美しさや、日本中に分布していることなどから、昭和32年には日本昆虫学会によって国蝶に選定されました。

このオオムラサキは環境庁も「指標昆虫(自然環境を測定する目安となる昆虫)」の一つに指定しています。また、里山の豊かさを物語る蝶とも言われています。その理由は幼虫の時には里山に自生するエノキという木の葉を食べて育ち、成虫になると里山の代表的な樹種、クヌギコナラ樹液や、クリクサギの花密などを吸うからです。つまり、これらの樹種が生えている里山以外では生きられない蝶なのです。そのため近年は雑木林が消えた都市部などを中心に絶滅した地域が増えてしまいました。

とは言え本来は北海道から九州までの幅広い地域に生息する蝶ですから、皆さんがお住まいの地域でも出会えるかもしれませんね。ぜひ手入れされた里山を訪ねてみてください。きっとほとんどの方が一目その姿を見たとたん、ファンになると思います。

特定非営利活動法人里山保全再生ネットワーク

岩間 敏彦

特定非営利活動法人里山保全再生ネットワーク代表理事。本業(ライター・カメラマン等)で培った技能を生かして社会貢献をしたいと考え、里山保全を始めとする環境保護活動に参加してきた。現在は里山保全・再生に軸足を置きつつ、複数の環境NPOで代表理事・理事などを務める。