里で暮らしてきた人たちの思いを伝える「里山の神様」たち
2017年1月31日(火)
新年を迎えて氏神様をまつる神社で初詣をした方も多いと思います。氏神様とは地域の人たちが共同でまつってきた神様のこと。でも、神社のほかにも地域の人たちがまつってきた神様はたくさんいるのです。
その代表が「道祖神」や「馬頭観音」、「庚申塔」などです。「道祖神」は悪霊や災厄が侵入するのを防いだり、子孫繁栄を祈ったりするために、集落の入口や道の辻に建てられたと言われています。「馬頭観音」はもともと人を救う「馬頭金剛明王」、「大力持明王」といった神様に由来するとされていますが、近世は馬と結びつけられ、馬を使った仕事や旅の無事を祈るため、または命を落とした愛馬の冥福を祈るために建てられました。「庚申塔」は村に悪魔や疫病が入らないように建てられたもので、「青面金剛」という神様の姿や、見ざる、言わざる、聞かざるの「三猿」が刻まれています。
これらの背景を詳しくご紹介するには紙面が足りないので省略しますが、現存する神様の大半は、信仰心が薄れたいまも大切にされています。例えば写真の「芦ノ尻の道祖神(長野県長野市)」です。毎年1月7日、道祖神の石塔を覆うように、地域の人たちが協力し合い、お正月飾りのしめ縄を使って独特の顔を作り出しています。また、観光振興の一アイテムとして活用するため、石仏群を大切に守り続けている地域が日本各地にあります。
科学万能の現代、信仰そのものがないがしろにされがちです。でも、里山の小さな神様たちは、自分たちが出せる力と知恵だけで暮らしてきた先人の思いを伝えるとともに、今も多くの人々を結ぶ役割を果たしているのです。