かつての万能林、アカマツ林で起きていること
2016年6月30日(木)
さまざまな木が育つ里山でスター級の木がアカマツです。荒れ地でも育つ強い生命力を持つ上に、材木が建築用材や杭、燃料など、多くの用途で使えるからです。とりわけ優れた燃料になるため、窯業や製塩業などが盛んだった地域でしきりにアカマツ林が造林されました。また、「マツタケ」が採れる山として守られてきた林もあります。
ところが今、各地でアカマツがどんどん枯れていく「松枯れ」が進んでいます。主な原因は体長1mmにも満たない「マツノザイセンチュウ」という線虫です。「マツノマダラカミキリ」というカミキリ虫に運ばれて木の中に入りこむと、水分の通り道をふさいで木を枯らすのです。また、林の手入れや間伐がされなくなって病害虫への抵抗力が落ちたために松枯れが起きているという説もあります。
倒木や枝の落下による事故が増加していることもあり、急ピッチで松枯れ対策が進められています。例えばヘリコプターなどから薬剤を散布してカミキリ虫を駆除する方法です。しかし、薬剤がミツバチや人間に悪影響を与える心配があることから各地で問題になっています。そのほか、健康な木に線虫の侵入を防ぐ薬剤を注入する方法や、枯れた木を薬剤でくん蒸してカミキリ虫の幼虫を駆除する方法など、さまざまな対策が取られています。
最近はアカマツをすべて切り倒し、別の樹木に植え替える山も増えてきました。松枯れを防ぐ決定的な方法が見つかっていない今、有用で秋の味覚も提供してくれるアカマツ林が消えてしまうのは時間の問題かもしれません。