コウノトリの野生復帰から10年
2016年4月30日(土)
コウノトリをご存じでしょうか。翼を広げると約2mにもなる大型の鳥で、国の特別天然記念物に指定されています。生態系ピラミッドの頂点に立つことから、生物多様性の豊かさを証明する鳥とも言えます。
かつての日本では至るところで見られました。しかし、乱獲や湿地の消滅、農薬の使用などによって徐々に姿を消し、昭和46年には傷ついて衰弱していた最後の野生コウノトリが死亡してしまいました。そして日本の空から完全に姿を消してしまったのです。
一方で野生コウノトリが12羽にまで減った昭和40年から、兵庫県豊岡市で人工飼育が始まりました。苦難の連続でしたが平成元年にようやく人工飼育繁殖に成功。平成17年には飼育コウノトリ5羽が初めて自然界に放鳥されました。以降は放鳥が続き、野生復帰10年目を迎えた昨年には約80羽が日本の空を飛ぶようになりました。これまでに目撃された地域は、青森から鹿児島までの40府県に及ぶそうです。
コウノトリが生きていくには生息環境の保全も必要なため、豊岡市ではえさ場の確保や農薬に頼らない農法が広がりつつあります。それは多様な生物が暮らせる環境を取り戻す取り組みとも言えます。
人類は便利で快適な生活と引き換えに、自然界を損壊し続けてきました。しかし、消えかけている生物を増殖させたり、生息環境を取り戻したりできるのも人類です。コウノトリの野生復帰10年を迎えたいま、あらためて自然界に対して人類ができる貢献を考えてみませんか。